機械少女 挿絵 #03 「先生!さようなら!!」

毎日遅れることなく迎えにくるアンナに、優希は母親の想いを重ねていた。

そんな気持ちを汲んでの事か、周りの人たちはアンナの事を母親と呼称するようになった。
機械少女 挿絵 #04 甘える事を知らなかった。

日常がこんなに楽しいものと知らなかった。

母親が暖かく柔らかいものと知らなかった。
機械少女 挿絵 #05 アンナいう母親の存在は、優希の生活に大きな変化をもたらした。

まるで淡い飴のように包み込まれた毎日は、幼い心に空いた穴を確実に埋めていった。
そんなある日の事、心無い二人の園児の一言が始まりだった。
機械少女 挿絵 #06 「優希のママってそのロボットなんだろ?」

「じゃあ優希の体もきっと鉄で出来てるんだ!」

幼さゆえか、優希にはその冷やかしを無視するような許容がなかった。
「違う!ボクは人間だ!」
最初は落ち着いて否定していた優希も、度重なる冷やかしにヒートアップして、相手の胸座をつかみ掛かった。
「でも先生だってそのロボットの事を優希のママって言ってるじゃないか。」
「ママがロボットならその子供だって、ロボットのはずだろ?」
「違うッ、こんなのボクのママじゃない!ただのおもちゃ…デパートで買ったおもちゃなんだよ!」
「嘘つけ!」
「だったら証拠みせてみろよ!」
「~~~~~ッ!!」
もはや、優希にはこの二人を黙らせる事にしか考えが行かなかった。


「だったら、ここから飛び落ちさせてみろよっ!」
そこは幼稚園近くの川に掛かった橋だった。
さすがに優希は躊躇した。
もしこの高さから落ちるのが自分ならば、おそらくただでは済まないだろうと容易に判断がつく。
「出来るだろッ!ただのおもちゃなら!」
何か良い打開策を考えようとしたが、まくし立てられるこの状況では、焦りばかりがつのる。
「やっぱりお前の体は鉄で出来てるんだ!」
「ロボットは幼稚園なんかに来るな!!」
機械少女 挿絵 #07 「う、うるさい、うるさい!!アンナ、ここから飛び降りろ!」

「…優希さん……」

ついに命令してしまった。
優希の心の中にはどこか、アンナが拒否するだろうという安堵感があった。
こんなバカげた事を大人がする訳がない。
それは逆に言い返せば、機械少女の事を人間として、自分の母親として認めていた事でもあった。
しかしアンナの口から漏れた言葉は…
「…判りました。」
了解の言葉だった。


自ら過ちを犯してしまった事に気付いたのは、アンナが本当の母親ではなく、自分の言葉に従うロボットであると再認識した時である。
「バッバカッ!やめろっ…」
その言葉が言い終わらないうちに、橋下の川へと飛び込んでいた。


数刻が過ぎたが、アンナは川の深層に飲み込まれ、水面に現れる事はなかった。
自らの軽はずみな言葉に後悔した優希は、その場に泣き崩れてしまった…