「ぅ……えーん、ぅえーん……」
僕はまた泣いている。一体何回目だろう…

真夏の昼間だというのに妙に暗く寒かった。
そして空腹がさらに不安を強めていった。

…あれは本当に夢じゃなかったんだろうか?
僕が勝手に作り出した希望ではなかったのか?

そう思うたびに、あの時の木の実の味を思い出す。

甘く、苦味があって…それに涙の味がした。
そして君は微笑みを浮かべながら、言ったんだ。

「信じていれば、また会える。」…と。
僕の夢はいつもここで終わる。






ここは都会を遠く離れた森。
喧騒や雑多という言葉が程遠いこの森に、一人の妖精が住んでいた。

彼女の名前は「フローラ」。
フローラはその森で、多くの動植物や虫たちと暮らしていた。
妖精の森 挿絵 #01 妖精の加護は、森に多くの恵みをもたらした。

肥沃な大地と、風の息吹。
豊かな雨と、太陽のきらめき。

まるで楽園と化したその森は、永遠とも思える時間を奏でていた。
しかし穏やかな時は、突如としてかき消される。
静寂だった森は、人間の手によって刻々とその姿を変えていった。

虫たちは踏み潰され、川には毒を流され、木々は次々になぎ倒された。
…破壊、殺戮。

そこに住む生き物は次々と住処を追われ、いつしか森を離れていった。


フローラは必死に人間達に止めるよう、訴えかけた。
しかし、妖精の姿や声が人間達に届くはずもなく、気付けば一人ぼっちになっていた。

「どうして、どうしてこんなことをするの…?にんげんなんて……にんげんなんて、だいっきらい!」


森を追い出されたフローラは、新しい住処を探して彷徨う。
しかし現実は厳しく、求める森は一向に見つからなかった。

いつしかフローラは都会へと流れ着く。
飛ぶ力も失い、羽をたたんだフローラは暗い路地に座り込んでしまった。
妖精の森 挿絵 #02 「……おなかへったよぅ。」

孤独、恐怖、空腹。
まるで周りの全てが敵となしたかのような錯覚。

もはやフローラにとって自分の森探しなど、どうでもよくなっていた。

今はもう…自分を不幸に陥れた人間を憎みながら、眠りたかった。