それからフローラとシャイニーは各地を転々とした。
探し求める森は一向に見つからなかったが、フローラにはあの時の家の人間の事が気になっていた。

「ねぇ、シャイニー。私もういちどだけあの家に行ってみたいの…」
「だめよ。一度行った家は怪しまれてるから。」
「ね、そこをなんとか。おねがい。」
「はぁ…あんた可愛い顔の割りには、結構頑固なとこあるよね。」
シャイニーはしぶしぶながらも、その家に向かう。


二人が再びその家に入ると、前にはなかった一角があった。
そこは花で彩られた空間で、中心には蜂蜜や花の種などフローラとシャイニーの好物が丁寧に置かれていた。

「これは…人間のワナよ。それにしてもこんなあからさまな仕掛けで捕らえようなんて、なめられたものね。」

と、フローラの方を振り返ると、ふらふらとその場所に向かって近づいていた。
「こら、なにやってんのッ!戻りなさいってば!フローラっ!!」
しかしフローラはその花の陰に入って行ってしまった。


「はぁ…こんな"ワナです"ってワナに引っ掛かるなんて、何て馬鹿なのよ。…あの娘。」
予想通りしばらく待っても戻って来ないフローラに、シャイニーは呆れを通りこし怒りさえ覚えていた。

「全く世話が焼けるんだから……しゃーない、助けに…」
「ねぇ、シャイニー。」

いきなり後ろから肩を叩かれ、墜落する程に驚くシャイニー。
「どうしたの、シャイニー?」
そこにはきょとんとしたフローラが居た。
「もうっ!あんた……ほんとバカ!」


「だいじょうぶだよ、ほら。」
フローラはその中に入って行くと、安全な事を訴える。
しかし都会暮らしが長いシャイニーは、警戒しながら周りを見渡す。

「ねぇ、シャイニー。もじ読める?」
そこには、小さな紙にきれいな字である場所が記してあった。

「んもぅ、しょうがないわねぇ。」
シャイニーはしぶしぶとテーブルの上に座ると、花の種をかじりながらそこに書いてある文字を読む。
妖精の森 挿絵 #05 『森をお探しの二人の可愛い妖精さんへ。ここにおいでなさい。きっと気に入りますよ。』

「だってさ。よかったじゃん。」
「ほんとに行くんだ~、フロ~ラ~?」
「うん、何でだか分からないけど、行かなきゃいけない気がするの。それにあの人には、私たちのすがたがやっぱり見えてたんだと思う。」
「まぁ、止めても聞かないだろうし……好きにしなさいな。」

都会よりずっと西へ。
昼夜を問わず飛び続けた先に、その森は存在した。
妖精の森 挿絵 #06 深く、美しく、そして静かに広がっている木々。

優しく流れる清流の輝きと、豊かな鳥達のさえずり。

そして何よりも、一面に広がる咲き乱れる花々がその森を彩づかせていた。

フローラには何故かその森の事が、とても懐かしく思えていた。
上空から見て拓けた一角があり、そこにこの森を案内したその人間はいた。

「やあ、来てくれたんだね。」
「ふーん…おっさん、やっぱ私達の事が見えんだ?」

人間は上空を見上げ、少し間を置くと視線を戻し、口を開いた。
「ずっと信じていたからね。」

「おじさん…この森…。」
「気に入ってくれたかい?」
「ええ、とっても。」
「この森はね、30年前に大きな山火事があったんだ。それはもう酷い有様だったんだよ。」
「やまかじ…?」

「私達はこの森を元に戻す為に植林などの活動を行ってきたんだ。それでまぁ…こんな感じに元通りにはなったんだが…。一つ足りないものがあってね。」
「たりないもの?」

「…それは君達だよ。妖精の住む森さ。」
「ようせいの…もり。」